とほほの確定申告入門
確定申告とは
- 1月1日~12月31日までの所得に対する所得税を計算して税務署に申告するものです。
- 毎年2月中旬から3月中旬の間に前年分を申告します。
- 会社で源泉徴収されている人は基本的に確定申告は不要ですが、下記に該当する人は申告が必要です。
- 収入が2,000万円以上ある場合
- 給与を複数個所から受けている場合
- 給与以外の所得金額が20万円を超える場合
- 公的年金を受けていて源泉徴収されている人は基本的には確定申告は不要ですが、下記に該当する人は申告が必要です。
- 源泉徴収されていない公的年金がある場合
- 公的年金の収入が400万円以上の場合
- 公的年金以外の所得が20万円を超える場合
- 源泉徴収されている場合、下記の人などは確定申告することで税金が戻ってくることがあります。
- 医療費・薬代・介護保険サービス費用から保険などによる補填金を差し引いた額が10万円を超える場合
- ふるさと納税をしていてワンストップ特例を適用していない場合
- そのほか、下記で説明する各種の控除を受けられる場合
所得税の計算(概要)
下記で計算します。
確定申告では下記のような書式で計算・申請します。
給与所得者の場合の例
例えば、サラリーマンAさんの源泉徴収票に下記の様に記載があったとします。
支払金額 | 6,500,000円 | ...(1) |
給与所得控除後の金額 | 4,760,000円 | ...(3) |
所得控除の額の合計額 | 3,000,000円 | ...(4) |
源泉徴収税額 | 89,848円 | ...(10) |
これは、下記の様に計算されています。
収入(支払金額) | = | 6,500,000円 | ...(1) |
必要経費(給与所得控除) | = | 1,740,000円 | ...(2)=(1)×20%+440,000円 |
所得(給与所得控除後の金額) | = | 4,760,000円 | ...(3)=(1)-(2) |
所得控除(所得控除の額の合計額) | = | 3,000,000円 | ...(4) |
課税対象 | = | 1,760,000円 | ...(5)=(3)ー(4) |
税率 | = | 5% | ...(6) |
税額控除 | = | 0円 | ...(7) |
所得税額 | = | 88,000円 | ...(8)=(5)×(6)-(7) |
復興特別所得税 | = | 1,848円 | ...(9)=(8)×2.1% |
納税額(源泉徴収税額) | = | 89,848円 | ...(10)=(8)+(9) |
収入と所得の違い
「収入が103万円越えたら」とか「所得が48万円越えたら」とか言いますが、収入と所得は異なります。上記の通り 収入 から 必要経費 を差し引いたのが 所得 であって、給与所得者の場合は、給与収入から給与所得控除分を差し引いた額が給与所得となります。
控除とは?
私が入社したばかりの頃、生命保険のおばちゃんに「年額10万円以上のに入ると5万円は税金で控除されるから」と説明され、無知な私は「税金が5万円安くなる」と思いその生命保険に加入しました。ところが、後で調べてみると生命保険の「控除」というのは「税金を5万円差し引く」のではなく「課税対象額を5万円差し引く」という意味なんですね。新入社員の頃は10%課税が大半でしたから「5万円の控除」というのは「課税対象が5万円安くなる×10%=税金が5,000円安くなる」ということでした。
所得税の計算で 控除 は下記などの意味で使用されます。
- 必要経費:収入から差し引かれる金額。給与所得控除など。
- 所得控除:所得から差し引かれる金額。配偶者控除、扶養控除、医療費控除、生命保険控除など。
- 税額控除:税金から差し引かれる金額。配当控除、災害減免など。
所得税の計算(詳細)
収入
給与・賞与や、商売の売り上げなど、得た金額全てです。給与所得、退職所得、事業所得、不動産所得、山林所得、配当所得、利子所得、雑所得、一時所得、譲渡所得の10種類に分類されます。下記にその説明があります。
必要経費
収入を得るために必要とする経費で、収入の種類によって必要経費として扱われるものが変わります。例えば商売の場合は仕入値や人件費等、給与所得者の場合はスーツやカバンの購入などで何らかの経費が必要だろうということで給与所得控除などが必要経費として計上できます。
- 給与所得(No.1400) : サラリーマンの給料や賞与など。
- 給与所得控除(No.1410) : 収入に応じて必要経費として控除
- 給与所得者の特定支出控除(No.1415) : 通勤費・転居・研修費などが高額な場合の特別計算
- 所得金額調整控除(No.1411) : 障害者や障害者を扶養する場合の控除
- 退職所得(No.1420) : 退職金や厚生年金一時金。
- 事業所得(No.1350) : 商売や事業の売り上げ。
- 家内労働者等の必要経費の特例(No.1810) : 家庭内労働者に対する特例
- 不動産所得(No.1370) : 家賃収入など。
- 山林所得(No.1480) : 山林の譲渡によって得る収入。
- 配当所得(No.1330) : 株の配当金など。
- 利子所得(No.1310) : 利子で得た金額。
- 雑所得(No.1500) : 公的年金、副業収入など。
- 一時所得(No.1490) : 懸賞、福引、馬券払戻金、生命保険一時金など。
- 譲渡所得(No.1440, No.1460)
所得
下記で計算されます。
所得 = 収入 - 必要経費
所得控除
下記などを所得控除として計上できます。
- 基礎控除
- 基礎控除(No.1199) : 所得に応じて決められる控除
- 扶養家族に関する控除
- 配偶者控除(No.1191) : 所得の少ない配偶者に対する控除
- 配偶者特別控除(No.1195) : ある程度の所得のある配偶者に対する控除
- 扶養控除(No.1180) : 配偶者以外の扶養家族1人あたりに対する控除
- 寡婦控除(No.1170) : 寡婦(夫と死別した女性)に対する控除
- ひとり親控除(No.1171) : ひとり親に対する控除
- 勤労学生控除(No.1175) : 勤労学生に対する控除
- 障害者控除(No.1160) : 障害者に対する控除
- 保険料に関する控除
- 社会保険料控除(No.1130) : 健康保険、介護保険、年金などの支払い分を控除
- 生命保険料控除(No.1140) : 生命保険の加入に応じて決められる控除
- 地震保険料控除(No.1145) : 地震保険の加入に応じて決められる控除
- その他控除
- 医療費控除(No.1120) : 10万円を超える医療費を支払った際に受けられる控除
- 寄付金控除(No.1150) : 寄付金を支払った場合の控除
- 寄付金控除(No.1155) : ふるさと納税に関する控除
- 雑損控除(No.1110) : 災害や盗難で被害を受けた場合の控除
- 小規模企業共済等掛金控除(No.1135) : 小規模企業の共済掛け金に対する控除
課税対象
下記で計算されます。
課税対象 = 所得 - 所得控除
税率
課税対象 に応じて下記で計算されます。
税額控除
税率で求めた金額から、下記などを差し引くことができます。
- 税額控除
- 配当控除(No.1250) : 株の配当金等に関わる控除
- 災害減免(No.1902)
- 住宅借入金等特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 住宅耐震改修特別控除(No.1222)
- 認定住宅等新築等特別税額控除
- 分配時調整外国税相当額控除(No.5761)
- 外国税額控除(No.1240)
- 政党等寄附金特別控除制度(No.1260)
- 認定NPO法人等寄附金特別控除(No.1263)
- 公益社団法人等寄附金特別控除(No.1266)
- などなど多数
所得税額
下記で計算されます。
所得税額 = 課税対象 × 税率 - 税額控除
復興特別所得税
2011年12月の東日本大震災からの復興のため、2013年から2037年までの間は 復興特別所得税 が所得税に加算されます。
復興特別所得税 = 所得税額 × 2.1%
納税額
下記で計算されます。
納税額 = 所得税額 + 復興特別所得税
給与所得者の例の詳細
令和5年の算出に基づいて、年収650万円、妻と子供2人(大学生、高校生)のAさんが、副収入が25万円あるものの、医療費が50万円ほどかかってしまったAさんが、確定申告した場合で計算してみます。
収入・所得 | 金額(円) | 備考 | |
---|---|---|---|
① | 収入 | 6,500,000 | 源泉徴収票の支払金額 |
② | 給与所得控除 | 1,740,000 | ①が330~660万の場合:①×20%+44万円。給与所得者の必要経費 |
③ | 給与所得控除後の金額 | 4,760,000 | ①-② |
④ | その他の所得 | 250,000 | 雑所得(副収入)など |
⑤ | 所得 | 5,010,000 | ③+④ |
所得控除 | 金額(円) | 備考 | |
基礎控除 | 480,000 | 48万円固定 | |
配偶者控除 | 380,000 | 配偶者の所得が48万以下の場合 | |
配偶者特別控除 | 0 | 配偶者の所得が48万を超える場合 | |
扶養控除(高校生) | 380,000 | 16歳以上30歳未満の場合 | |
扶養控除(大学生) | 630,000 | 19歳以上23歳未満の場合 | |
社会保険料控除 | 960,000 | 健康保険、厚生年金等 | |
生命保険料控除 | 120,000 | 生命保険、介護保険、個人年金から計算 | |
地震保険料控除 | 50,000 | 地震保険 | |
医療費控除 | 400,000 | 医療費 - 戻ってくるお金 - 10万円 | |
⑥ | 所得控除の額の合計額 | 3,400,000 | 上記の合計 |
所得税 | 金額(円) | 備考 | |
⑦ | 課税対象 | 1,610,000 | ⑤-⑥ (1,000円以下切り捨て) |
⑧ | 所得税額 | 81,000 | ⑦が195万円未満の場合:⑦×5% |
⑨ | 復興特別税 | 1,701 | ⑧×2.1% |
⑩ | 納税額 | 82,701 | ⑧+⑨ |
⑪ | 源泉徴収額 | 89,848 | 源泉徴収票に記載 |
⑫ | 戻ってくるお金 | 7,147 | ⑪-⑩ |
リンク
- 確定申告 (国税庁)
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー